03.23
世界中でもっとも社長にふさわしいのは日本人?という皮肉
現地人が海外子会社の社長になることが理想なのだろうか?
吉原英樹先生(神戸大名誉教授)の1995年記事 *1には次のようにある。
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<研究会における実務家とのやり取りの場面>
日本国内の外資系の社長は、政治や文化など日本のことがよくわかった日本人が良い実務家は言う。
現地に精通した現地人材にはメリットがあるからだ。しかし海外にある日系子会社の社長はほとんど日本人であるが矛盾していないだろうか。
もし、現地を知りえず社長の任を担えるならば、日本人は世界中でもっとも社長にふさわしい人材となるがそれは本当か?
その場にいた実務家は「そうです」と答えた。
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う~ん。
戦後の日本企業の海外への市場拡大や生産拠点の進出を積極的に行っていた時代の日本人のアニマルスピリット発揮として説明できるかもしれない。
バブル崩壊後の日本人実務家にはまだ自信があったのだろうか、「そうです」と答えたのだから驚く。現在ではイメージできない返答だ。。
子会社の社長は親会社の子分である。海外子会社の社長の立場は一国一城の主ではあるが決して親分ではない。あくまでも親会社の子分でなければならない。
子会社の社長として現地に精通していることは明らかにメリットがあるが、子会社の社長として必要なのは子分としての態度や経営能力や行動特性なども求められるだろう。
もっとも、親会社にとって子会社の重要性や本当に全権を任すのかどうかなど親会社の統制の程度や委任の中身によって子会社の人選は異なるはずだ。
現地の理解の程度の差を国籍に置き換えて単純な議論にしてしまうことは危険をはらむ。
これは日本国内の関連会社社長の人選にも通じているはずだ。見過ごしていることはないだろうか。
海外子会社の社長にどのような期待をし、どのような人選が望ましいのか。これを明らかにすることが大切になのだが、現段階でそれらを整理した研究は極めて少ないのが現状だ。
<参考> *1
吉原英樹「外資系企業は良面教師」関西経済研究センター会報『KERC』282号 1995年2月号
吉原英樹「再論:海外子会社の社長-何がおかしい」『リエゾンニュースレター3号2003年2月号』神戸大学経済経営研究所付属政策研究リエゾンセンター
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