02.07
管理者の役割 1
組織マネジメントにおける管理者の役割とは何だろうか?
ファヨール(Fayol:仏)は企業における管理問題の存在とその重要性を初めて明示的に指摘し、全般管理の問題を中心とした体系的な経営管理論*1を初めて示した。
炭鉱会社を立て直し技術者から経営者になったファヨール(Fayol)は、管理は技術であり、経営に関する長い経験から抽出した「管理原則」に依拠すれば改善は可能にでああるとした。
管理職能は、「5つの管理要素:計画、組織、命令、調整、統制で構成されるサイクル」として次のように示した。
- 計画する 将来を探求し、活動計画を作成すること
- 組織する 事業経営のための、物的および社会的という二重の有機体を構成する
- 命令する 従業員を職能的に動かせること
- 調整する あらゆる活動、あらゆる努力を結合し、団結させ、調和を保たせることである
- 統制する 樹立された規則や与えられた命令に一致してすべての行為が営まれるように監視すること
ファヨールは「管理の基本原則」として経験から、分業、権限、規律、命令の一元性などの基本原則と14の原理を導いた。
【基本原理】
・統制の範囲の原則(span of control) 一人の管理者が監督する最適な部下の数が存在する
・権限移譲(delegation) ルーティンな問題を標準化された作業手続きを用いて作業すべき
・部門化(departmentalization) 似通った活動をいくつかの単位に分類し、組織全体の活動の担当部分に対して責任を負う
・命令の統一(unity of command)各部下は一人の上司の監督下にあるべき
・団結心(esprit de corps) 組織を円滑に機能させるために従業員の心を一つに調和を図る。
【14の原理】
1.分業の原則:労働の専門化による能率向上や熟練形成の容易化。
2.権限ー責任の原則:公式的権限を補完する個人的権限と責任。
3.規律の原則:優れた管理者・明確な労使協約・適切な制裁による規律の確保。
4.命令の一元性の原則:1人の上司からのみ命令を受け取る。
5.指揮の一元性の原則:同一目標をもつ活動の指揮者と計画は1つだけである。
6.私的利益の公的(一般的)利益への従属の原則:企業全体の利益の優先。
7.従業員の報酬の原則:公正で労働意欲を高める労働の対価。
8.集権化の原則:従業員の役割を増減させる分権化と集権化は程度の問題である。
9.階層組織の原則:命令一元性と迅速な伝達を確保するために架橋が用いられる。
10.秩序の原則:物的・社会的秩序のために適材適所をはかる。
11.公正の原則:従業員に対する好意と正義の結びつきにより公正が実現される。
12.従業員の安定の原則:従業員としての地位の安定と異動のバランス。
13.イニシアティブの原則:自ら計画・実行する創意を奨励し熱意・活動を引き出す。
14.従業員の団結の原則:命令一元性を守り、従業員の分裂や文書連絡の多用を廃し、団結を強化する。
このようにファヨールは経営管理の具体的な内容を管理過程の形で整理し、議論を進め、現代管理論の基本的な枠組みをつくった*2。
ファヨールは管理の重要性を訴えると同時に管理者教育として展開が必要だとした。
*1 Fayol(1917)『産業ならびに一般の管理』
*2 Fayolの管理過程学派はバーナードの登場以降は伝統的管理論と呼ばれるようになる。ファヨール以降のマネジメント・プロセス・スクールの伝統的組織論はその主張する原則や原理が相互に矛盾し、表面的で単純すぎる。現実性を欠いており組織に関する統一的な概念が欠如している。組織原則には科学的実証の裏付けがないなど、サイモン他の批判を受けることになる。他方「テイラーは対立する労使の立場を分析の哲学で統合しようとし、バーナードは制約と自由意志という対立物を初関係の全体性の思考で統合する。ファヨールは対立する分析の思考と関係の思考を二つながらに受け入れている」(坂井『人間・組織・管理』新版)との意見もある。いずれにしろ、管理過程論は現代でもPDCA/PDSサイクルなどに形を変えて利用されていることは時事実であり、管理原則として管理職研修の内容に登場している。
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