2023
02.08

幸福とは、味わって食べること


柴田悠「幸せに生きるために」(2023年1月上旬の日経新聞朝刊連載『やさしい経済教室』)では、次のような研究成果が紹介されていた。

 

1.幸福感を高める方法は、

・「味わって食べる」

・「経験を(一緒に)味わう」

・「自然と触れ合う(長時間歩く、自然と繋がりを感じる感性、自然公園に行く)」

・「質の高い睡眠をとる」など、である。

 

しかし、最近は幸福感に焦点を当てることの弊害が指摘されている。なぜなら、意図的に幸せになろうと試みる(幸福化の重要性を知り、幸福感を得たい意識が高まる)と、逆に(他人とのつながりを感じられなくなり、孤独感が大きくなり)幸福感が得られなくなるというのだ。幸福感は、各瞬間にあるというよりも、後で幸福感をもたらすだろう行動や経験に焦点を当てたほうがよい。一喜一憂するのではなく、中長期的視点を持つ方がプレッシャーかからないからだ。

 

2.主観的な幸福度の調査では北欧は高く、日本人は「並みに幸せ」

幸福を考える時には、自分だけではなく他者への幸福(親切な行為)も視野にいれることが大切だ。日本では幸福度を調査する時に主観的な幸福度に加えて「協調的幸福尺度」(自分が周りの人と共に幸せを感じているか、自分が人並に幸せかどうかなど)などを加え、注目されている。

 

3.人々の幸福感には「(多様な生き方に対する)人々の寛容さ」の効果が最も高い

その意味で、働く場面における私生活と仕事の両立支援は極めて重要である(北欧はそれを実現するために高い税率で、互いに多様な私生活を守ることを許容している)。私生活と仕事の両立支援はすべての人々の高い幸福感との好循環をもたらす。

 

4.社会政策としての提言

米国の研究では、社会政策の評価研究で費用対効果が最も高いのは、不利家庭の子供への教育と医療であった。

柴田は「日本で0-2歳児の保育を充実させれば将来の人びとの孤立や自殺を予防し、幸福の機会格差を縮める。それらにより、多様な生き方が実現し寛容さが高まれば、人びとの幸福感も高まるという循環が期待できる」と提言している。さらに柴田は「労働時間を週平均で8時間減らせば、日本の出生率は現在の1.3→2.0を実現できる。両立支援と保育は日本の低迷を救う」と主張する。

なるほど、これこそ「異次元」の提言ではないだろうか。もちろん生産性の議論がなされるべきだが、そのためのアイディアはあるはずだ。

社会

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