02.14
科学的管理法
”経験則の代わりに科学を探り出すのは普通の人間でできること。ただし、シンプルな改善であってもそれをうまく活かすには、各人任せの記録法、仕組み、協力体制などを体系化する必要がある” これがテーラーの科学的管理のポイントである。
科学的管理法のメカニズムを支える要素は以下のとおり。
- 時間研究
- 部門別(複数)職長
- 職場で使われるツールと作業の標準化
- プランニング部門の意義
- 例外原則に沿ったマネジメント
- 計算尺など時間を節約するためのツールの利用
- 指示カード
- 課題を活かすマネジメントと達成によるボーナス支給
- 差別的出来高賃金
- 製品やツールを分類するための記憶法
- 工程管理
- 近代的なコストシステム
テイラーは次のように解説する。
・課業とは
「一定の課題を時間内にこなすよう指示をすることが、平凡な働き手が最大限の満足をもたらし、自身もこれ以上ないような満足に浸る」「課業は優れた人が1日にこなせる内容であり、明確な基準に基づいて自分の1日の進捗を測り、目標を達成して満足を得る」ものである。
・賃上げを保証
一時的ではなく高賃金が維持されること。さらに平均を上回る賃上げが恒常的措置であること。また、課題を達成すればボーナスが出る。
・指導育成
生徒がもとめられる進歩を計画に沿って成し遂げるために、先生は生徒のひとりひとりに明確に課題をあたえ、何をどれだけ学ぶ必要があるのかを示す。ただ、かんばれ、と言うだけではない。
・プランニング部門の役割
作業の最適速度は計算尺などを使いプランニング部門が皆で協力して決める。これは現場から離れた机の上の作業である。そして、望ましい仕事の進め方を1枚の「指示カード」にまとめておく。働き手たちには最も有利な仕事のやり方を体系的に教えられる。
・管理者
現場は自分たちが放っておかれると指示カードに注意を払うのを怠るので、指導者(部門別職長)を配置して、作業者が目を光らせなくてはならない。
・複数の職長による指導
1人の職長ではなく任務の異なる職長をおく。「検査役」「親方(機械の動かし方)」「スピード担当」「修繕責任者」「時間管理者(賃金、報告書と回答)」「工程管理者」「規律責任者(いざかい対応)」がそれぞれ専門に応じて指導する。
・熟練工から指導者へのキャリアステップ
分業しているなら他の仕事も同じ。医学でも最初は先達から多くを学ぶ。学生は師から教えを請うが、科学的管理法の場合は指導者の側が働き手に接近しなければならない。知的レベルを変えることなく高度な仕事ができるようになる。利益にも貢献でき、高い賃金を得られる。熟練工はやがて指導者になリ、人材のレベルが引き上げられる。
・働き手の自主性
働き手は自由にツールや手段を選べない。しかし、改善提案があれば遠慮なく提出させ、それをマネジャー層はその提案を慎重に検討し必要なら実験を行い、従来のやり方と比較検討し判断しなければならない。そして工場全体、全社標準として採用していく。提案者は功労者として称え、創意工夫への報奨として上乗せ賃金を支払うのは当然である。この方が働き手の自主性が本当の意味で発揮される。
・警戒すべき点
ただし、管理のメカニズムを本質や哲学と混同してはならない。哲学を伴わず、急ぎすぎて用いられるとトラブル、ストライキ、挫折となる。「4つのマネジメントの重要な哲学」は、
1.実のある科学を導き出す
2.働き手を科学的な視点に基づいて選り抜く
3.働き手に科学的な訓練や育成を施す
4.マネジャー層と最前線の働き手の間に温かい協力関係を築く である。
・科学的管理への移行
「自主性とインセンティブを柱としたマネジメント」から「科学的管理法」への移行にはマネジャーと工員の発想や習慣を根本的に変えることが必要。時間をかけ、まずは「最初の一人」が納得するまでは、それ以上の改革はすすめるべきではない。全体の4分の1,3分の1まで来たら急ピッチで進めて良い。通常3,5年はかかる。
現代の私たちは、テイラーの「科学的管理管理」から何を学ぶべきだろうか?
<参考>
テイラー(1911)『新訳科学的管理法』The Principules of Management (2006) 訳:有賀裕子
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